SAN JOSE通信Vol.42

 

だいぶ前に、講談社現代新書出版の「バイリンガリズム」東 照二著の本を読みました。主に「個人にとってバイリンガルはどんなもので、何を意味するのか」「どうしたらバイリンガルになるのか」「社会から見たバイリンガル教育・バイリンガリズムとは何か」等が書かれています。自分の子供に、無理やり語学教育を押し付ける気持ちは毛頭ないのだけれど、彼が少しでも本来の明るい性格を取り戻せるにはどうしたらッ良いのだろうか・・・と、その本を買った当時は「わらをもすがる」という気持ちだったので、興味深く読んだものです。

 

最初に読んだ時は、やはり「バイリンガルになるには」という章に目がいっていました。(↓)

 

TaborsとSnowによると、子供が第二言語を習得していく場合、一気呵成に習得するのではなく、いくつかの段階を経て習得していくという。彼らはその段階として、大まかに次の4つを挙げている。

1段階:周りの子どもは自分と違う言語で話しているのだが、本人はそんなことにおかまいなく、自分の言語(母語)で他の子どもたちに話しかける。相手はわかるはずもないのだが、なんとかわかってもらおうといい方を変えたりしながら、相手に自分の言語をわからせようとする。そのうち、自分の言語が相手にわかってもらえないのを発見し、自分の言語を使うのをあきらめる。子どもによっては、自分の言葉でひとり言をいい続けたりする。

第2段階:まったく話さなくなるか、あるいは身ぶり手ぶりで相手と意思疎通をしようとする。相手の言語を音だけまねてみたりする。あるいは相手の言葉の一部をまねて、ひとり言を小さな声で言ってみたりする。

第3段階:相手の言語を使ってみようとする。もちろん、文法的にも不完全で電報文のような単純化した短い表現を使う。たとえば、let’s go and playという代わりにただplayとだけいう。言語的には最低限のものだが、意味がその場の雰囲気で伝わるような表現だ。

第4段階:文法的にもかなり正確で適切な表現をするようになる。言語習得の成熟期である。』

(省略)

この4段階を新幹線かなにかのように猛スピードでなんの問題もなく進んでいく子どもがすべてだとはけっしていえない。多かれ少なかれ、子どもたちなりに悩んだり不愉快な思いをしながら、言語習得の長い道のりを歩んでいくといえる(大人はこれを無視しがちである)」

 

自分の子供を実験対象のような目で見るのは嫌だけれど、その頃は、何度もこの部分を眺めては「この子のひとり言は、ステップアップの過程だから心配しなくて良いのね」と自分に言い聞かせていた。旦がまるで自分の世界に引きこもるように、ひとり言ばかり言っている時期があったのです。とても心配しましたが、この本を随分と支えにしていました。

 

何度も読んでいるうちに、次第に「言語への態度」の段落に目が行くようになりました。(↓)

 

「子供の英語能力と相関関係にある要素は年齢や滞在年数ではなく、子どもの英語に対する態度である。(中略)英語に対する態度が肯定的であればあるほど、英語能力も高いということになる。(中略)親としては、子どもが目標言語(英語)に対して、あるいは目標言語話者に対して肯定的なイメージをもつようにしむけることが、子どもの言語学習の成功への一つの鍵だと考えていいだろう。」

 

私は特別旦に対して、上記のようなことを仕向けたことはありません。けれど思い起こせば、旦が時折みせていた英語話者に対する引け目を、理解してあげていない時期があった。このときまさに彼は第1段階と第2段階を行き来している時だったと思う。その後不安がありながらも、お友達と交流をはかるためにか、今までインプットしていた英語をアウトプットするようになってきた。このお友達の存在が、彼にとって「目標言語話者に対して肯定的なイメージをもつ」につながったのだと思う。実際、キンダーで初めてお友達が出来たのは、旦が転んだときに、それを心配して先生に知らせてくれた子がいたことがきっかけでした。その子が今一番の仲良しさん、メヒュー。このメヒューの行為は、彼にとってとても嬉しかったようでした。それ以後、貝のように押し黙っていた彼は変り、メヒュー・ケビン・ルーリー・リーシーとお友達も増え、一気に話し出し始めたのです。旦の中で、自然と「話すことの必要性を強く感じた」のでしょう。

 

そして最近「エンパワーメント」の段落に興味を持つようになった。(↓)エンパワーメントとは、日本語にすると「力を得ること」かな?

 

「エンパワーメントとは、共同的な力関係の中で作り出されるパワーのことである。この考えでは、バイリンガル教育とは生徒にパワーを与えること、つまり生徒のエンパワーメントであり、具体的にいうと、生徒に自信、誇り、成功するための能力を与えることである。(中略)自分がクラスの中で無視されないで尊重されるということ、自分はクラスの中で仲間はずれではなく、クラスのメンバーとして認められていること、こういったことから生徒達はパワーを得ることができるのである。」

 

本当にそう思います。お友達が出来たことをはじめ、Jayne・Miss Sanfilippo・Mrs. Sylvia・プレスクールの時の先生方が密に連絡を取り合い、皆(キンダー以外の学校の先生方も)が旦を引っ張りあげようとしてくださっているのです。こういったことに旦本人はどこまで気付いているか知りませんが、方々から彼がパワーをもらっているのは事実。私たち親も、心を砕いて彼にはパワー(褒めちぎったり、励ましたり、ヒントをあげたり)を送っています。

当時私たちが一番心を痛めていたことは、旦が日々自信を失っていくことでした。それは端から見ても痛々しいもので、途方にくれましたが、彼が一連のパワーを受けるようになり、英語をアウトプットするようになってから、みるみる自信を取り戻してきました。もちろん、全てにおいてではありません。お友達と遊ぶことは出来るし、宿題も出来る。でもクラスでの課題はなかなかうまく出来ません。家に帰って、私が課題の趣旨を日本語で説明すればちゃんと理解できるのですが・・・。でも、皆からのパワーは確実に彼を変えました(*^^*)

 

パパは口癖の様に「日本も英語が第二母国語にならなければ、世界に通用しない」と言います。パパはこの本は読んでいなかったので、私はこの本の中にある「カナダでのイマージョン教育」について話して聞かせました。随分と興味深げでしたが、まだまだこの教育法は問題が多いと痛感したようです。イマージョン教育とは、簡単に説明すると「目標言語のみで授業を行う(受ける)」ものです。これだと、今の旦が、まさにそうであると思われてしまいそうですが、決定的に違う点があります。それは、生徒全員が授業を目標言語で受けるという点です。イマージョン教育に興味があれば、この本以外にも色々本が出ているでしょうから読んでみてください。

 

蛇足ですが、私はこのイマージョン教育に関しては「へーなるほどねぇ」としか思わなかったのですが、パパはいたく熱心にこの部分を読んでいました。そして発した言葉が「日本も・・・」それを聞いた私は「そんな先のことを・・・」だったのですが、パパは「先のことを今の人間が変えていかなくてはだめだ。俺、政治家になろうかな」と言いました。この人が言うと、何だか本当にやってのけてしまうんじゃないかしら?と思わせるところがあります。←親ばかならぬ、夫馬鹿(こんな言葉あるの?)

 

何だかとりとめもない内容になってしまいましたが、私はこの本に密かに(そして確かに)救われていたので、このSAN JOSE通信を「自分達のここでの生活の記録」という趣旨も兼ねていることから書きました。私にとっては、記憶に残しておきたい1冊となったのです。

 

最後に、第二言語を習得するには、日本語(母語)の力をしっかりつけることが大事だと考えています。子供達は年齢的に、まだ母語のほうも完璧ではないので、こちらも同時にきちんと教えていかなくては。

 

halloween_pumpkin_md_blk.gifさてさてあさってはHALLOWEEN我が家もお決まりのPumpkinのCarvingをやってみました。

日本のかぼちゃよりもやわらかい感じで、思ったよりも簡単に出来上がりました。それでも大きければ大きいほど、それなりに力もいり時間もかかりました。2時間半一心不乱にCarvingし続け、翌日筋違いを起こした私って・・・・(^^;)

↑前回の通信に

書いた、言のPre-school

で手に入れたPumpkin

Carvingしたい

図柄を描く

↑上部のヘタを切り

専用のヘラで

中身をかき出す

↑描いた絵に沿って

専用ナイフで切る

↑出来上がり

↑これは旦くん作

Sharingにも持って

行きました

↑出来上がって

大喜び!

↑週末に、もっと

大きなPumpkinで

Carving (^^;)

↑旦もお手伝い

ライトアップの模様は、ハロウィンが終了してからお届けしますね♪

 

いちほ(10/29/02)

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